アウシュヴィッツを訪れて。
チェコではその後、ブルノという街に移動し2泊ほどした。
街並みは綺麗だし、物価も安い。ビルの三階にあるホステルもなかなか居心地もよく、メキシコ人の友達もできた。
そのあとはまたバスに乗ってポーランドのカトヴィツェという町に向かった。
ポーランドに来た目的はただ1つ。
負の世界遺産である、「アウシュヴィッツ強制収容所」に行くこと。
ここも世界一周中に必ず訪れたいと思っていた場所。
アウシュヴィッツの存在を知ったのは、ドラマ「白い巨塔」で唐沢寿明演じる財前教授が学会出張の合間で訪れるシーンを見て。
その時ホロコーストについて知っていたかは覚えていないけれど、ただならぬ重苦しい雰囲気がすごく衝撃だった。それから高校生になってから友達に「シンドラーのリスト」を勧められたりして、いつか自分もアウシュヴィッツに行ってみたいと思っていた。
そして、大人になった今、そこで自分自身が何をどう感じるかに興味があった。
ダッハウは一番古い強制収容所で、他の収容所のモデルになったところ。
それから日系アメリカ人部隊の442ndが解放をした場所でもある。
ツアーデスクで英語のツアーに申し込む。
本当は日本人唯一の公式ガイドの中谷さんにお願いしたかったんだけど、ツアーではなく個人で行くにはアウシュヴィッツのHPから予約が必須で、今回は残念ながら直前すぎて予約が取れなかった。
英語ガイドのツアーは90%理解できたと思う。
内容は基本情報がほとんどで、ほぼ事前に調べたものと変わらなかった。
いざアウシュヴィッツを訪れたものの、なんだかあんまり現実的に感じられない。ダッハウの時と同じで、なんだか自分とはすごく遠い世界の出来事のように感じてしまった。
遠い国の遠い昔の出来事。本当にこんなことがあったのかな?
自分の生きてきた道を過去にひっぱても繋がっているようには思えなかった。
そんな自分に危機感を感じた。
でも、途中でユダヤ教徒の人とすれ違った時は心がチクリとした。
こんなに多くのユダヤ教徒の人を見たのはイスラエルに行った時以来。
彼らは一体どんな気持ちでここにいるのだろうか。
大量のメガネ、靴、くし。それから髪の毛。
髪の毛で繊維をつくるだなんて、一体誰が言い出したんだろう?
いろんな展示があったけど、胃の奥がずしっと重くなったのは、
写真がずらーっと展示されている廊下。
全員丸刈りにされ、囚人として撮られた写真。
もちろん誰の顔にも表情はなく、ただレンズを見つめている写真。
これが、人生で最後の写真で、その後も残っていく写真なんだと思うと気分がひどく滅入って目眩がしそうだった。
ヨーロッパ各地から連れてこられたユダヤ人たち。
ここでは医者による選抜が行われ、働けるものは収容所へ、働けないものはガス室に送られたそう。
「彼らが歩いた先に待っているのは死だけでした」というガイドさんの言葉を聞いた後、皆でその道を静かに歩いた。
ふと、スペイン巡礼時の記憶が蘇る。
歩くこと自体が楽しくて、歩いた先はいつも温かい場所だった。
人って怖いな。ってこと。
もう少し言うと、人の信じる力が怖いって思った。
当時のナチスも、現代のテロリストも別に自分たちが間違ったことをしているなんてことは1mmも思ってなくて、自分の中の正義を貫いただけなんだと思う。
残虐なことを悪意を持たずにできてしまう怖さ。
客観性を排除して、閉鎖的な思想を盲信してしまう危うさを、誰もが持ってるのかもしれない。自分がそうならないため、社会にそれを生まないためにに出来ることとは。
それを考え実践することが、歴史から学ぶということなんだと思う。
それでは今回はこの辺で。
夏だし、平和や戦争について考えたいよね。